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いまだに、大真面目にこういう似非科学を吹聴する(自称)科学者がいる。

集中力を高めるにはマーラーがおすすめと脳科学者・澤口氏 - goo ニュース

この記事のなかで澤口氏は、集中力を高めるのに最適なBGMはクラシック音楽であり、特に神経系を刺激する高周波音を豊富に含んだマーラーの楽曲がおすすめである旨を述べている。

では、この言説が、いかにバカバカしいものであるか、以下に説明しよう。

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まず、「高周波音」の説明がない時点で、科学的な説得力がなく、胡散臭さ満点である。高周波音とは周波数の高い音のことであるとしか解釈できないが、これだけでは何を意味しているのか特定できない。とりあえず考えられるのは、次の2つである。

(1)音符に現れる音の高さ、すなわち音高が高い

(2)楽器の特性として現れる倍音が多い

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まず、(1)は論外だ。マーラーの曲が他の作曲家よりも音高が高いということは、全くない。音高は、演奏する楽器や歌手に応じて制限されてしまうもので、作曲家によって変動するような自由度はほとんどないのである。たとえば、マーラーの『亡き子を偲ぶ歌』を男性が歌えば、シューベルトの『アヴェ・マリア』を女性が歌うよりも、音高は当然低いのだ。

そもそも、音高が高いほうが良いのなら、「マーラーを聴け」などと言うのではなく、「(誰の曲でもいいから)チェロ・ソナタよりもヴァイオリン・ソナタを聴け」というほうが、圧倒的に理にかなっている。

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となると、検討に値しそうなのは(2)だが、これもやはり無知が招いた明らかな大嘘である。

倍音というのは簡単に言うと、音符上の音とは別に、実は含まれている音のこと。あるオクターブの「ド」を笛で吹いても、もう1つ高いオクターブの「ド」の音も、人間には知覚できないが、実は同時に鳴っている。こうした倍音がどのように含まれているかで、楽器の音色が決まる。倍音が少ない楽器として代表的なものはピアノで、逆に倍音が多いのはトランペットやホルンなどの金管楽器だ。

マーラーの交響曲には、確かにトランペットなどの金管楽器がふんだんに使われている。だから澤口氏は、「マーラーの楽曲がおすすめ」と言ったのではないだろうかと思われる。

しかし、聴いてみれば分かるが、マーラーの交響曲におけるトランペットの音は、BGMとして聴いていてリラックスして集中力が高まるような代物ではない。ジャンジャン、ガッシャーンと大きな音で派手に鳴らすために使われ、どっちかというと聴衆を興奮させるタイプのものである(交響曲第1番の第4楽章など)。

それに、マーラーの楽曲であれば必ずトランペットやホルンが含まれているわけでもない。マーラーの楽曲としておそらく最も有名な交響曲第5番第4楽章(アダージェット)は、喫茶店や映画などでBGMとして良く使われる音楽であるが、金管楽器は一切登場せず、倍音は少ない。他の交響曲でも、金管楽器が殆ど活躍しない楽章は一杯ある。

リラックスするためにトランペットやホルンを聴くべきだと言うなら、マーラーよりも、テレマンやハイドンのトランペット協奏曲や、モーツァルトのホルン協奏曲をおすすめするのがスジだろう。マーラーと同様に金管を良く使うワーグナーやブルックナーやリヒャルト・シュトラウスはダメで、マーラーでなければならない理由も、全く不明だ。ちなみに私は、リヒャルト・シュトラウスのホルン協奏曲第2番の第2楽章が異常に好きで(なぜあまり人気がないのか理解できない)、おすすめである。

そもそも、倍音が多いほうが良いのなら、「マーラーを聴け」などと言うのではなく、「(誰の曲でも良いから)ピアノ独奏曲よりも管弦楽曲を聴け」というほうが、圧倒的に理にかなっている

いずれにしても、「マーラーの楽曲」という限定の根拠が全く不明で理解できず、「高周波音」が(2)の意味だとしても、愚かな偽科学だと断定せざるを得ない。

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繰り返すが、音の高さも、倍音の多さも、作曲家によって決まるモノではない。従って、こういう説は眉唾どころか、確実に間違いであり、大嘘であると、自信を持って断言できる。誰の曲であろうが、自分が好きな曲を聴けば良いのだと、私は思う。
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