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 昨年の北京オリンピック(五輪)で、女子ソフトボール日本代表の金メダルに感動した方は、多いだろう。そのソフトボールが二〇一二年のロンドン五輪で競技種目から除外され、残念に思っている方もまた、多いことだろう。
 「ソフトボールを五輪で観られない」ということを残念に思う方もあるだろうし、「選手たちの目標がなくなって気の毒」とお考えの向きもあるだろう。「五輪競技から除外され、ソフトボール人気が低下する」と危機感を募らせる関係者もいるだろう。

 …だが私は、これらの考え方は、実は全ておかしな考え方だと思っている。

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 ソフトボールを本当に観たいなら、五輪でなくとも良い。たとえば、日本リーグを観に来て欲しい。一部リーグは例年、四~六月に前半戦、九~十月に後半戦を行い、十一月に決勝トーナメントで優勝を決める、という流れ。北海道から鹿児島まで、日本各地の球場を転戦する。上野由岐子投手をはじめ、日本代表級の選手らによるプレーは、五輪とほぼ同じくらいレベルが高い。これを観ずして、四年に一度しかない五輪の舞台だけを楽しみにするなんて、いささかナンセンスだ。

 国内リーグはイヤだ、どうしても日本代表のゲームがイイ、とおっしゃる方も、心配はご無用。五輪だけでなく、世界の強豪を集めたカップ戦は毎年行われており、ジャパンカップなど日本で激戦を展開する大会もある。
 ソフトボールは投球間隔に厳密な時間制限があるなど、プロ野球のようなダラダラ感がない(いまのプロ野球のダラダラ感は異常である…)。そのうえ、話してみると選手達はみんな陽気で元気が良く、それがキビキビとしたプレーにも反映されて、実に爽快なのだ(いまのプロ野球選手はクールすぎて、試合中も通夜みたいだ…)。球場に足を運んでも損はない。

 そして何より、そうやってファンが日本リーグに足を運んで、日本リーグを盛り上げることこそが、ソフトボール界にとって重要なのである。
 国内リーグが人気を集め、注目の的となれば、それが未来の選手達の目標となる。もうお分かりであろう。ソフトボールに打ち込む選手達や子供達にとって、「五輪からソフトボールが除外されたこと」が問題なのではないのだ。「五輪しか選手の目標がない」ということこそが、根本的な問題なのである。

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 現状、一番の問題は、プロモーション不足であろう。たとえば私は横浜市民だが、横浜市の保土ヶ谷球場でソフトボールの日本リーグが行われ、金メダリストたちがたくさん来るのだということを、ほとんどの横浜市民は知らないと思う。
 保土ヶ谷球場は県立保土ヶ谷公園という公園にある。以前、事前取材のためその公園に行ったとき、公園事務所の玄関にしか、日本リーグ開催を知らせるポスターが貼られていなかった。公園事務所なんて、関係者以外、誰が行くというのか!!

 皆様も思い返してみて欲しい。今年の前半戦も、全国津々浦々で、女子ソフトボール一部リーグの熱戦が行われたが、普通に暮らしていて、それを知ることができただろうか?
 日本リーグの露出度がこの有様では、五輪競技から除外されたことを期に、ソフトボール部を廃部する企業も続出しかねない。とにかく早急に、国内でのプロモーションの改善こそが必要だ。

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 …というわけで、本当に心から選手たちの勇姿を観たいという方は、日本リーグを観に来て欲しい。それでも、「五輪種目から除外されてしまったのだから、人気低下は避けられない」とお考えの方に言おう。その考え方は、逆である。五輪によって競技が普及するのではない。競技が普及した結果として、その競技が五輪に採用されるのだ。五輪は、競技を宣伝するための大会ではない。
野球だって、一九八四年から二〇年間も五輪で競技されてきたが、世界的に全く普及しなかった。だからこそ、ソフトボールと一緒に五輪競技から外されたのだ。

 確かに、五輪は日本人にとって特別な舞台である。しかし、そうやって五輪ばかりに頼っているからこそ、五輪競技から除外された途端に慌てるハメになる。仮に二〇一六年の五輪で復帰できたとしても、次の五輪ではまた除外されるかも知れない。もっと言えば、日本が五輪をボイコットせざるを得なくなったり、五輪そのものが消滅したりしたら、どうするのか。五輪に頼ってはいけないということは、火を見るより明らかだ。
 ソフトボールが五輪種目から外れたことを嘆く前に、この九月から佳境の後半戦がはじまる日本リーグに盛り上がろうではないか。それこそが、ソフトボールを「救う」ことになるのだ!

(この記事は「逓信協会雑誌」2009年9月号に掲載されたものです)
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