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来春のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に日本が参加するかどうか、話題となっています。そこで、前回の第2回大会(2009年)の直前に、ある雑誌に書いたコラムを、以下に掲載しておきます。

ここにきてようやく、日本人にも「WBCの正体」が次第に理解されてきたようですので、この記事をお読みになると、「何をいまさら」と思われるかも知れません。しかし、このコラムを書いた2009年当時は、わざわざこのようなコラムを書かねばならないほど、日本のファンはWBCに「心酔」していたのです。それを振りかえる意味でも、改めてここに載せてみました。

今回の騒動で「参加すべき」「辞退すべき」といろいろな意見があります。私自身は、改めて申し上げるまでもありませんが、こんな大会に頑張って参加する必要はないと(第1回大会の前から)思っています。


 ■ ■ ■

「ワールド・ベースボール・クラシックの正体」

3月5日に開幕する、第2回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)。さて、この新しい大会が、「クラシック」と呼ばれるのは何故なのか。

実は米国では、毎年7月に行われるメジャーリーグのオールスターゲームのことを、「ミッドサマー・クラシック」と呼んでいる。WBCとは、これになぞらえて、米国人が勝手につけた名称だ。つまり、リーグ対抗ではなく出身国対抗のオールスターゲームを新しく作ってみよう、という発想のもと、メジャーリーグで生まれたのがWBC。米国人は、「野球の世界一決定戦」どころか、「米国内のオールスターゲーム」ほどにしか思っていない。日本のプロ野球選手も出場できるのは、せっかくなので米国外の選手も見てみたい、という話になったからに過ぎないのだ。

このようにWBCは、単なるメジャーリーグの「第2のオールスターゲーム」兼「国外選手の品評会」。それどころか、WBC決勝が行われる3月は、米国内では「マーチ・マッドネス(3月の狂気)」と呼ばれる大学バスケの話題で持ちきり。WBCなんて、ほとんど注目されないのである! ナ・リーグ打撃二冠王のハワード、同最多勝投手のウェブ、ア・リーグ奪三振王のバーネット…などなど大物メジャーリーガー達が揃って早々にWBCを辞退したことにも、何の不思議もないことがお分かりであろう。

こんなイベントで幾ら頑張って優勝したって、とてもじゃないが世界一を名乗れない。第1回WBCで優勝したのは日本だが、「野球の世界一は日本」と思っているひとなどいないだろう。その証拠に、「より高いところを目指して」米国に渡る日本の選手が、後を絶たないではないか! WBCで怪我をしたり、普段とは違う国際球で調子を崩したりしないようにと、WBCを辞退したプロ野球選手は日本でも何人か出たが、英断と言うほかない。彼らを批判する意見は多く、「WBC辞退者には罰則を」と極論する者までいるが、理解しがたい。

…要するに何が言いたいのかというと、WBCで幾ら頑張っても、リスクばかりで報いが小さい、ということである。「いや、WBCだって、日本を中心に盛り上げていけば、やがてサッカーのワールドカップ(W杯)のような権威ある大会にできるはずだ」と反論されるかも知れない。たとえばイチローなども、そうした考えを強く主張し続けている。しかし、私は賛成できない。

メジャーリーグが主導するWBCを幾ら続けても、権威ある大会にはなり得ない。米国の思惑通りの大会が出来上がっていくか、さもなくばアッサリ消滅するのがオチだ。サッカーW杯を主催するのは、どこかの国のリーグではない。国際サッカー連盟(FIFA)である。他のどのスポーツでも、権威ある国際大会は、その競技の中立な国際統括組織が運営している。すなわち、権威ある国際大会をつくりあげるには、アメリカ主導のWBCを継続するのではなく、国際野球連盟(IBAF)が主導する国際大会を創設するのがスジなのだ。

メジャーリーグは、IBAFに加盟していない。だから、IBAFが大会を作っても、当然メジャーリーグは不参加だ。だが、初めはそれでも良いのである。盛り上がる大会を作り上げさえすれば、向こうから「仲間に入れて」と言ってくる。何をかくそう、かのサッカーW杯がそうだった。サッカーの母国イングランドは当初FIFAに加盟しておらず、W杯の盛り上がりを無視できなくなってFIFAに加盟、第4回大会(1950年)からW杯に参加している。

米国は基本的に、国内の人気スポーツを国際競技に育てようという発想が、あまりない。米国で最高の人気競技は文句なくアメフトだが、アメフトを世界的な競技にしようなんて誰も思っちゃいない。米国内で盛り上がり、ついでに海外のファンから小金が入れば、それで良いのだ。そんな米国が主導するWBCに参加を続け、「権威ある国際大会に育てよう」と意気込んでも、きっと徒労に終わる。ましてや、もし日本が2連覇でもしてしまったら、野球の本家・米国がWBCに本腰でないことが、ますますバレてしまい、WBCの権威がいっそう下がるだろう。

いや、そもそも、だ。米国を見習うワケではないが、「権威ある国際大会を作って、野球を世界的な競技にしよう」という発想から、疑問に思ったほうがいい。日本プロ野球の人気がピークだった王・長嶋らの時代は、野球の国際大会などなかったし、五輪種目でもなかった。「野球を国際スポーツに」という考えありきではなく、「我々が野球でもっと熱くなるためにはどうしたら良いか」を、立ち止まって考えてみるべきではないか。WBCとは、それを教えてくれる大会なのである。
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