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JALの機内誌に、北海道の大雪山が特集記事として紹介されていました。

この記事のなかで、かつてアイヌの人々が、大雪山を「カムイミンタラ」と呼んでいたとの説明がありました。「カムイミンタラ」とは「神々の遊ぶ庭」という意味であり、「おわす」ではなく「遊ぶ」と名付けたアイヌ人のセンスが素晴らしい、と記事は感嘆していました。

この記事に限らず、ここ最近、大雪山のことをカムイミンタラと紹介し、その意味はアイヌ語で「神々が遊ぶ庭」である、とする地図やガイドブックが非常に多くなっています。

ところが、このアイヌ語の解釈は、端的に言って誤りです。結論から言うと、「カムイミンタラ」とは、「神々の遊ぶ庭」という意味ではなく、「ヒグマがよく出るところ」という意味です。

では、なぜ「神々の遊ぶ庭」という和訳が定着したのでしょうか。

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まず、アイヌ語の「カムイ・ミンタラ kamuy mintar」を直訳すると、「神の・庭」という意味になります。

アイヌ文化では、ヒグマが神の化身であると考えられています。大雪山系はヒグマが多く出没する場所であり、ここをアイヌ人が「カムイミンタラ」と呼んでいたのであれば、それは単に「ヒグマがよく出るところ」という意味なのです。

実際、知里真志保氏の『地名アイヌ語小辞典』を当たってみると、「ミンタラ」の項に、「庭」という意味から派生した意味として、「ヒグマが繁殖期に歩き回って草を踏み倒した場所」のことであると記されています。そして、このような場所は危険で立ち入ってはいけないのである、との記述もあります。

そして、「カムイミンタラ」の項には、「ヒグマの遊び場」とハッキリ明記されています。つまり、ヒグマが繁殖期などの日中にウロウロ遊んでいる場所、というわけです。

常に北海道の大自然に暮らしてきたアイヌ人は、たまに日常から離れてリフレッシュのために手つかずの原始的な景色に触れるような、我々現代人とは違います。彼らは、生活と命を守るために、その場所でよく獲れる食料や、その場所の危険さを表すような地名を付けていたのです。

ちなみに、「カムイミンタラ」と呼ばれた場所は、北海道には他にも幾つもあります。大雪山だけが特別にカムイミンタラなのではなく、ヒグマがよく出没する危険な場所は、アイヌの人々にカムイミンタラと呼ばれていたのです。

この「ヒグマの遊び場」という正しい解釈から、「遊ぶ」という言葉が遊離し、直訳の「神の庭」と混ざったことによって、「神々の遊ぶ庭」という和訳が定着してしまったようです。

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要するに、アイヌ人にしてみれば、大雪山の幻想的な景色に神々しい名前を当てたわけではなく、単に「ヒグマがよく出るところで危険だ」という警告をこめて、「カムイミンタラ」と呼んでいたのだと思われます。

というわけで、繰り返しになりますが、「カムイミンタラ」を「神々の遊ぶ庭」などとことさらに幻想的に訳したのは、明らかに現代人的なセンスによる意訳に過ぎません。あくまで、大雪山周辺の原始的な景色に感動した、和人による独自の解釈なのです。

ただもちろん、このセンス自体は、実に正直で素晴らしいと思います。まだ行ったことのないかたは、ぜひ訪れてみてください。旭岳ロープウェイ(少々お金が掛かりますが)で姿見駅に上り、周辺の遊歩道などを散策するのがおすすめです。「神々の遊ぶ庭」と言いたくなると思いますので。

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