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第59回全国高校軟式野球選手権大会の準決勝、中京-崇徳(延長50回で決着)が話題となり、高校生の肩の酷使、投球数制限やタイブレークの導入、そのほか色々について議論が起きています。

そこで、以前に私が発表したコラムを再掲いたします。2006年の夏、駒苫・田中と早実・斎藤の投げ合いのあとに発表したものです。問題視されるべき「高校生の酷使」は、甲子園や明石だけの問題ではない、という論旨です。

8年前の記事ですが、問題は何も変わっていません。むしろ悪化しているかもしれません。


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高校球児の酷使は、甲子園だけではない (2006年8月27日)

早稲田実の斎藤佑樹投手のフィーバーが続いているが、彼が甲子園で4連投した件で私は、「高校野球の大会では投球数制限を導入するべきだ」と主張した。

もちろん、その考えには全く変わりはない。投球数制限なんて、韓国の高校野球では既に実施されているし(うまく機能していない問題はあるが)、アメリカの学生球界では奇抜な発想でも何でもない。

だが、さらに考えて欲しいことも実はある。

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私などは、一応「進学校」と呼ばれる公立高で野球をやっていたから、練習試合などはせいぜい週に1回だった。平日は授業で、練習試合などやっている時間はない。そもそも田舎だったので、試合ができる相手校自体も少なかった。

だが、特に私学強豪校は、実は信じられないくらいの数の練習試合をこなしている。公式発表があるわけではないので、あまり定量的なデータは提示できないが、特に学校が休みになる夏休みなど、ダブルヘッダーを絡めてほぼ1日1試合のペースで試合を組むことはザラだ。いや、学期中の平日にだって、平気でダブルヘッダーを組んだりする。

抱える選手数も多いから、ダブルヘッダーでは1試合目に1軍、2試合目に2軍、といった感じで練習試合を組む。そうやって、ほぼ丸一日試合をしている。それを1日おきとか毎日、やっているわけだ(一体彼らは、いつ勉強をしているのだろうか)。

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そんな状況であるから、学校にもよるのだが、私が取材した限りでは、1人の投手が月にざっと10とか12試合に先発するくらいのペースは、ごく当たり前である。

こういった例は枚挙にいとまがないが、例えば横浜高の左腕エース・川角謙投手は、今年の夏の大会直前の約20日間で、少なくとも7試合の練習試合に先発している。これは中2日よりも多い登板ペースであるから、もちろんプロ野球はおろか、メジャーリーグの比ではない。

現西武ライオンズの涌井秀章投手(同じく横浜高)なども2年生のとき、2003年8月だけで、公式戦を含む11試合に先発し、救援含め計14試合には登板している。なお、涌井投手の高校生活最後の夏は、2004年7月21日の神奈川大会4回戦から8月19日の駒大苫小牧戦で敗れるまで、1ヶ月弱で9試合もの公式戦に先発し、うち7試合は完投している。

もちろん、実力に劣るチームとの対戦もわりと入るので、その場合は調整登板と考えて良いかも知れない。全試合9イニングを行うわけでもないから、場合によっては投球練習と同程度に考えても良いかも知れない。だが、「投手の肩は消耗品である」という認識が、現場に果たしてあるかどうか、この数字を見る限り極めて疑わしい。

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重要なことは、競争が激しい強豪校では、こういう酷使に耐えた者が生き残り、エースとなっているのだという事実である。「故障に強い者がエースとなっているから、甲子園でもエースは連投しても大丈夫」ということでは、決してない。「強豪校のエースは、未完成の体で普段から酷使されていて、いつ壊れてもおかしくない」ということに他ならないのである。そして、「エースになるためには、無理をしてでも、普段の酷使に耐えなくてはならない」という現状があるのだ。

甲子園で行われている高校野球は、酷い。酷いから、甲子園の高校野球は観たくないというひとも多いかも知れない。だが我々は、甲子園以外の高校野球こそを、もっと観るべきなのかも知れない。

酷使されて才能を摘まれた投手と言えば、沖縄水産の大野、智弁和歌山の高塚、天理の本橋、智弁学園の辻本・・・といった「甲子園ピッチャー」の名前を挙げるファンは多いだろう。だが、甲子園に出る前に壊れ無名のままマウンドを去った投手のほうが、多いことは間違いない。それはそうだろう。我々内野手でさえ、やれ肩が痛いだの、肘が痛いだのと音を上げているのだ。成長途上の普通の投手が酷使されたらどうなるか・・・。

こうやって実名を幾つか挙げてしまったので付記するが、こういったチームの監督だけに責任は押し付けられない。名将だなんだと言われようと、所詮、「勝利を至上命題として雇われた野球監督」に過ぎないからだ。むしろ、雇うほうの責任であると言うべきだろう。

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そうやって普段から酷使され続けているからこそ、早実の斎藤投手にもスタミナがあったし、連投にも耐えた。そう考えるのは間違いではないだろう。だからこそ、日本中を湧かせた投げ合いを演じられたのだと言われれば、もちろん否定はしない。

だが、高校生の部活動を全国中継して、高校生に満員のスタジアムでヒーローインタビューをして、高校生が乗ったバスをファンが取り囲み、空港で女性ファンが大挙して高校生を待ち構えるようになり、青いタオルハンカチが飛ぶように売れるようになるまで、高校生を酷使してサバイバルさせヒーローを育て上げる必要は、ない。

高校野球連盟は、野球留学の実態を調査するとか言って、越境入学の数字だけ列挙して満足しているヒマと労力があるのなら、まずは練習試合などでの選手の酷使にも目を光らせるべきではないか。そして、幾ら強豪のスパルタ高校の練習試合でも、やっぱり投手に4連投はさせないのだと言うことも、ぜひ付け加えておきたい。


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